「クラウドアトラス」に勘違い。

宅配レンタルでちょっと前の映画「クラウドアトラス(Cloud Atlas)」のBlu-rayを借りてみました。

全く予備知識なしで観始めたので、「2144年のネオ・ソウル」のエピソードに対し、大きな勘違いをしてしまいました。

↓こんな勘違いです。

「さすがウォシャウスキー姉弟、ウィリアム・ギブスンを読み込んでるなぁ。『記憶屋ジョニイ』の世界観を引用しているのか」

↓こんな世界観です。

《アンダー・ザ・ナイフ》の娘たちは、ソニー・マオに夢中だから、シックな内眼角贅皮らしきものをつけ加えられないようにするのが、次第に大変になってきている。

—— ウィリアム・ギブスン『記憶屋ジョニイ』

私はてっきり、ヒロインの相手役の男性は、

整形手術を施して、東洋人風の顔になった白人(という設定)

だとばかり思っていました。

遠い未来社会では、いわゆる「イケメン」の基準は韓流スター顔で、白人もファッション感覚で整形している歪んだ世界、なのだろうなぁ、なかなかハードな設定だなぁ……。

その後、ストーリーが進むにつれ、俳優たちはエピソードごとの様々な役柄のために特殊メイクを施されていることがわかってきました。
単にこの男性は韓国人の役を演じているだけなのでした。白人なのに。

完全に勘違いでした。
でも無理がありすぎだと思いました。

『スプロール・シリーズの世界』

ギブスンの初期三部作をえらく読み込んでいる方を見つけました。

ウィリアム・ギブスンの初期三部作、いわゆる「スプロール・シリーズ」についての言及を見つけました。

どぐち屋」というサイトの「SF/FT雑記」というコーナーです。

2010年頃からこつこつと書きためていらっしゃるようです。
相当読み込んでいる方のようです。
私はたいへん楽しめましたが、原著を読んでいない方にはちんぷんかんぷんだと思います。

タグ「ギブスン」のためにリンク集にしてエントリーしておきます。

////////////////////////////

「(その29)」以前は全て過去ログの1ページにまとめられていました。

◎「(その1)」〜「(その26)」にはnameタグがふられていません。

////////////////////////////

140220|追記 自分で見つけたつもりでしたが、リンク先などを辿ると以前twitter上で教えてもらったことのあるサイトでした。(^^;)

伊藤計劃『虐殺器官』

伊藤計劃『虐殺器官』はW.ギブスンの影響強すぎ。

遅ればせながら、伊藤計劃の『虐殺器官』を読みました。

う〜ん……。残念ながら、あまり楽しめませんでした。

内容の面白い/面白くない以前に、作者が使っている文体や語彙に対して、ウィリアム・ギブスンの「スプロール三部作(※1)」の影響が感じられ、鼻についてしまったのがその理由です。

これが例えばジャンルの被り、すなわち「ルビを多用した、ハードボイルドなSF小説」、あるいは「SF設定/世界観を微に入り細に入り説明したがる語り口」、といった類似ならば許容可能なのですが、作品内に使われている語句、言い回しの端々にギブスン(と翻訳の黒丸尚)の強い匂い(※2)を感じてしまうのです。これには閉口しました。曰く、

  • 「(死体の口元の表現として)まるでなにか言い残したことがあるとでもいうように」
  • 「トリヴィア(※3)」
  • 「(「somebody」の日本語表現としての)誰かさん」
  • 「脳漿(のうしょう)」
  • 「穿つ」
  • 「肉(は)牢獄」
  • 「手合い」
  • 「(台詞としての)『びっくり』」
  • 「(機器の)チェックに余念がない」

文脈抜きで取り出して眺めてみれば、一つ一つは日本語としてごく真っ当な表現なので、単に自分の読書歴の偏りに依る自意識過剰なもの(※4)かとも思い、我慢して読み続けました。

ですが、第四部を読み始めたとき、『ニューロマンサー』第二部「買物遠征(ショッピング・エクスペディション)」冒頭や、第三部「真夜中(ミッドナイト)のジュール・ヴェルヌ通り」冒頭の描写との酷似に「なんだ、やっぱりパクリじゃん」と納得してしまいました。表現手法と段落構成が全く同じです。

そう判断したとたん、「ここも同じ」「あそこも同じ」と、引用箇所を探し出すパズルと化してしまい、本来のストーリー(※5)はどうでもよいものになってしまい、楽しめなかった(※6)、というわけです。

2作目の『ハーモニー』も同時期に購入しましたが、まだ読んでいません。


※1 翻訳は黒丸尚。『ニューロマンサー』、『カウント・ゼロ』、『モナリザ・オーバードライブ』の3作となります。

※2 作者インタビューを読む限り、ギブスンの影響が強い事は事実のようです。

※3 『記憶屋ジョニイ』の一節を思い起こしました。

※4 とは言うものの、やはりその人の読書遍歴により、「ネタ元はこれだ!」の内容はそれぞれ異なってくるようです。Amazonの書評やtwitterのつぶやきには様々な指摘がありました。

  • 『メタルギアソリッド』もろくにやってなさそうな奴らが持ち上げててウケる。
  • オチがハーラン・エリスン(『世界の中心で愛を叫んだけもの』)の短編にそっくり。
  • Ph.Kディックの劣化コピーだ。
  • 目新しくはない。例えばディレイニーの『バベル17』。
  • コナミ小島監督(『メタルギアソリッド』)に大きな影響を受けている。
  • J・G・バラードに似ている。
  • サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』を想起させる。
  • P.S.ビーグル『心地よく秘密めいたところ』を思わせ、

などなど、皆さん自分の思い入れの強い作品を挙げており、ほとんど「釣り」の入れ食い状態になっているようです。

アニメ・ゲーム系の小ネタも仕込まれているとの事で、サンプリング/カットアップ小説としては相当濃い作品なのでしょう。ですが、それならばダン・シモンズの『ハイペリオン』を楽しめるようになった方が有意義ではないかと思います。

※5 実は、ストーリーもあまり感心しませんでした。近未来の合衆国の軍人が主人公のはずなのですが、全くそのような感じがしない。「新潮文庫の100冊」を読破した20世紀生まれの日本人青年が延々独り言をつぶやいており、ドミノ・ピザのケータリングは府中街道を走っているのです。

※6 冲方丁『マルドゥック・スクランブル』を読んだときも同じでした。ギブスンの差分を削除した後は、「少女と鼠がおじさんとトランプをしてる小説」としか感じませんでした。国内SFとはどうも相性が良くないようです。

ウィリアム・ギブスンの脚本

ウィリアム・ギブスン脚本のX-FILEを観ました。つまらなかった。

ウィリアム・ギブスンが脚本に参加した『X-FILE』のエピソードが存在する、と聞いて探して観てみました。

……。非常につまらないものでした。本当につまらなかった。心底がっかりしました。
タグ「ギブソン」のために一応エントリーしておきます。

シーズン7 第152話(File No.713)「ファースト・パーソン・シューター(First Person Shooter)」
『エイリアン2』のしょぼいオマージュが悲しい、非常につまらない作品でした。「日本人」の表現が何とも……。

シーズン5 第108話(File No.511)「キル スウィッチ(Kill Switch)」
もしや、と思いこちらも観てみましたがやっぱりつまらないものでした。『ジェイコブス・ラダー』からの引用も何だかなぁ、という感じです。

『X-FILE』は観たことがなかったので、シリーズ自体がつまらないのかとも思いましたが……、

よく考えてみたらギブスン本人の原作・脚本の『JM』も最高につまらない作品でした。
キアヌ・リーブスが『マトリックス』の主役を演じるきっかけになった以外、何の功績もない作品ではないでしょうか。
さっさと思い出すべきでした。

『記憶屋ジョニイ』(Johnny Mnemonic)の世界が大道具で再現されていて本人大感激、ということですが、肝心の脚本がオリジナルの素晴らしさを全然再現していませんでした。アメリカ映画業界独特の規制コードとかがあるのでしょうか。

『ニューロマンサー』の映画化が進んでいるようですが、ちょっと心配です。かなり心配です。

Expanded Book

どんなメディアフォーマットもいずれ廃れますよ。新しい物ほどすぐ廃れます。

Voyager Expanded Book

週末に本棚を整理していたら、昔購入したウィリアム・ギブスンのスプロール三部作のエキスパンドブックExpanded Book)が出てきました。

発行は1992年とあります。あまりにも古く、もはや最新のOSXでは閲覧できないのでした。

エキスパンドブックはもともとHyperCardのスタックとして開発された、極めて初期の電子書籍(※1)なのです。

後継のフォーマットである、T-Time用のブラウザ(リーダー)を使えば読めるという情報もあるようですが、確認しようにも手元にあるのはMacintosh用にフォーマットされた2HDのフロッピーディスクのみ。読み込みのためのドライブすらもはやありません……。

Voyager Expanded Book

Voyager Expanded Book

もっとも、ギブスンの初期三部作は、現行のKindleやAudibleで買い直してはいます。実はどうでもいいのです(※2)……。

死んでしまったメディア、他にもいまだに自宅にたくさん残っています。レーザーディスク、VHSビデオ、アナログのレコード。あるいは漢字Talk時代のアプリの専用形式のファイル(※3)など……。

恨んでいる訳ではありませんが、信頼できるのは、textファイルくらい(※4)でしょうか……。

※1 640px × 400pxのモノクロ画面以上、漢字Talk+HyperCardのインストールされた古いMacintoshが必要です。
※2 本当の本当はどうでもよくありません。NeuromancerはなぜかAudibleでは売られておらず、Mona Lisa OverdriveはなぜかKindleでは売られていません。
※3 昔作ったAdobe PageMakerのデータ、今となっては開けることもできません。移行期にはInDesign形式にコンバートできたのですが……。古いバージョン時代に書き散らかしたFileMaker形式のたくさんのメモもハードディスクの肥やしです。
※4 では信頼できる画像形式は何でしょうか……。sRGBの高画素の低圧縮jpgあたりでしょうか。では信頼できる動画形式は……。

110724|追記 Neuromancerのオーディオブック、ありました! iTunes Storeにありました。3,600円でした。念のため、Audibleをもう一度探したらこちらにもありました! 27.97ドルでした。Audibleで購入しました。ごく最近、110630のリリースです。映画化とかの絡みでしょうか。

レイディ 3スリージェイン

英語には「ルビ」はふられない。

Audible形式のウィリアム・ギブスン『モナリザ・オーヴァドライヴ』を聴いていて気づきました。

以下は登場人物の一人、レイディ 3スリージェイン関連の描写です。


最初に保管室にはいったのは、クローンした胎児十組。2ドウジャンと2ツージェイン、3トロワジャンと3スリージェイン——。

原著はこんな感じです。


The first occupants of the vault were ten pairs of cloned embryos, 2jean and 2jane, 3jean and 3jane. . . .

黒丸尚の翻訳では、テスィエ=アシュプールのクローン達は、「姉妹」の通し番号は英語読みで2「ツー」ジェイン、3「スリー」ジェイン、「兄弟」の通し番号はフランス語読みで2「ドゥ」ジャン、8「ユイ」ジャン、などとなっています(ルビが振ってあります)。

一方、Audible内のナレーションは兄弟姉妹共に英語読みです。特に工夫もなく、そのまま「ツー」ジャンに「スリー」ジャンでした。フランス語読みしている箇所は見つけられません。

当初、ナレーション収録時のミスかと思っていました。『モナリザ・オーヴァドライヴ』のAudibleは全部で11時間ほど(10時間51分37秒)の長大な音声ファイルです。が、よく考えると英語には元々ルビは振ってありません。スプロール三部作の原著から、テスィエ=アシュプール家の描写の周辺をざっくり読んでみましたが「兄弟はフランス語読みの数字」などといった説明は見つけられていません。

現時点での理解は、「翻訳者の黒丸尚は原著とは関係なく勝手に上記の命名ルール(男性はフランス語読みの数字)を設定し、ルビをつけまくっていた」、というものです。「ルビはぜんぶ翻訳者のオリジナル表現/原著には一切関係ない」と理解するとさらにすっきりします。

ウィリアム・ギブスンの「スプロール三部作」は私の愛読書です。

ケバブの汁と揚げ卵の食いこぼし

コピペできないなら、「電子書籍」って不便ですね。

前回に続いてもう一つ。同じくウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』の一節です。


シルクの黒タイが、擦り切れたカーボン・リボンのようになりはじめている。
新品スーツのラペルには、ケバブの汁と揚げ卵の食いこぼし。

原著ではこんな感じです。


His black silk tie was starting to resemble a worn carbon ribbon.
There were medallions of kebab gravy and fried egg on the lapels of the new suit.

「fried egg」が「目玉焼き」なのは私でもわかります。「揚げ卵」って……。
ですが、エキゾチックな食べ物の感じ(舞台はイスタンブール)はよく出ています。

……。電子書籍を使って、このようなエントリーを作成したかったのですが、実はここまでの作業、すべて手作業です。

Amazon(.com)で購入したKindle用の『Neuromancer』Kindle for Macで結構長いことめくりましたが、結局求める箇所は見つけられませんでした。「検索」機能もないので(見つけられませんでした)、「fried egg」すら検索できません。
結局(紙の)ペーパーバックをパラパラとめくり、該当箇所を見つけました。

また、Kindle版で見つけられたとしてもカーソルは入らないので、見ながら手で打ち直すのは結局一緒です(綴りの間違いないよう、けっこう神経使って入力しました)。

Kindleは、「(Mac版だと)検索できない」「カーソル入れてコピペできない」というのは事実でしょうか。それとも私の勘違いでしょうか。事実ならば残念ながら「電子書籍」って利便性低いなぁ、と思います。テキストファイル(.txt)などとは大違いの不便な媒体だなぁ、と思います。