レイディ 3スリージェイン

英語には「ルビ」はふられない。

Audible形式のウィリアム・ギブスン『モナリザ・オーヴァドライヴ』を聴いていて気づきました。

以下は登場人物の一人、レイディ 3スリージェイン関連の描写です。


最初に保管室にはいったのは、クローンした胎児十組。2ドウジャンと2ツージェイン、3トロワジャンと3スリージェイン——。

原著はこんな感じです。


The first occupants of the vault were ten pairs of cloned embryos, 2jean and 2jane, 3jean and 3jane. . . .

黒丸尚の翻訳では、テスィエ=アシュプールのクローン達は、「姉妹」の通し番号は英語読みで2「ツー」ジェイン、3「スリー」ジェイン、「兄弟」の通し番号はフランス語読みで2「ドゥ」ジャン、8「ユイ」ジャン、などとなっています(ルビが振ってあります)。

一方、Audible内のナレーションは兄弟姉妹共に英語読みです。特に工夫もなく、そのまま「ツー」ジャンに「スリー」ジャンでした。フランス語読みしている箇所は見つけられません。

当初、ナレーション収録時のミスかと思っていました。『モナリザ・オーヴァドライヴ』のAudibleは全部で11時間ほど(10時間51分37秒)の長大な音声ファイルです。が、よく考えると英語には元々ルビは振ってありません。スプロール三部作の原著から、テスィエ=アシュプール家の描写の周辺をざっくり読んでみましたが「兄弟はフランス語読みの数字」などといった説明は見つけられていません。

現時点での理解は、「翻訳者の黒丸尚は原著とは関係なく勝手に上記の命名ルール(男性はフランス語読みの数字)を設定し、ルビをつけまくっていた」、というものです。「ルビはぜんぶ翻訳者のオリジナル表現/原著には一切関係ない」と理解するとさらにすっきりします。

ウィリアム・ギブスンの「スプロール三部作」は私の愛読書です。